本気が仲間をつくり、社会をつくる。 /はが路100km徒歩の旅実行委員会

 「豊かな現代だからこそ、あえて子どもたちに不便さ・辛さ・苦しさを体験してもらい、地域ぐるみで子どもたちを育てていこう!」――そんな思いで2003年、「はが路100km徒歩の旅」は始まった。

 

 はが路100km徒歩の旅は、芳賀郡内の小学4~6年生の子どもたちを対象とし、地域に設定した100kmの道のりを4泊5日かけて歩き抜く事業である。

 日常生活の中には、自分の力で乗り越えなければいけないことが多くある。それは大人でさえ、その苦しさから現実と向き合えず、避けてしまうこともある。だからこそ、子どものうちに「自分の力で乗り越える」体験をすることで、自分で考え、行動し試練や苦労にさえ感謝できる強く、優しい人間になれるのではないか――そんな願いを込め、この事業は始まった。

これが、この事業の大きなコンセプトの「生きる力の醸成」である。

第二の主役、学生スタッフの存在

本気のディスカッション
本気のディスカッション

 そして、この事業の大きな支えとなっているのが、学生スタッフの存在だ。

彼らが受ける研修・ミーティングは、5月から事業実施後の10月までの間、25回を数える。何度か研修に顔を出すことがあった。研修の内容は事業に直接かかわることはもちろん、話し合いの仕方や自己分析などについてもレクチャーを受ける。説明者が彼らに質問を投げかけると、参加している者全員が挙手をし、自分の意見を積極的に述べようとする。グループ討議の時間では、互いの本音をぶつけ合いながら議論を進める。その光景には毎回のことながら圧倒されてしまう。


 このほか、活動を進めていく中で、彼らが気づいたり不安に思ったりしたことについては、徹底的にシミュレーションを繰り返す。当日参加する子どもたちだけでなく、学生スタッフ一人ひとりの成長の場となっていることは言うまでもない。

 

 学生スタッフに話を聞いてみた。


 「学生生活の中で出来た友達はそこまで深くない関係だけれども、ここで出会った友達は胸を張って"仲間"と呼べる」「みんな本気で向かってくるから自分も本気になれる」「はが路を通して集まったメンバーとは真剣に関われる」

――見栄や意地、恥を忘れ、素の自分を出せる場所であるからこそ、仲間というより深い人間関係を築けるのではないだろうか。彼らの話を聞いてそのように感じた。

 

 これは、学生スタッフだけではなく、当日参加する子どもたちにとっても同じで、4泊5日苦楽を共にすることで仲間の意味に気付く。親元を離れ、見知らぬ同世代と寝食を共にすることは、最初のうちは抵抗を感じ、弱音を吐いたり泣き出したりする子どもも少なくない。しかし、励まし合いながら歩みを進めることを通して、隣で歩く仲間がかけがえのない存在であることを認識するのではないだろうか。

自らの力で、未来を切り拓く

当日のコースを実際に歩いてみる
当日のコースを実際に歩いてみる

 現代社会は、あらゆる面で選択肢が増えたことで、人々の付き合い方も多様になっている。どうコミュニケーションを取ればいいか分からず、悩んでいる若者が多いのも現状である。豊かさの一方で、人間関係を深めるきっかけが少なく、その方法を学べる機会も乏しい。何かきっかけがない限り、深まらない人間関係。

こうした中で、未来の担い手たちに対して、このような自らの力で人間関係を深めるきっかけを創り出すことが重要であると、取材を通じて知ることができた。

 

 今年の「はが路100km徒歩の旅」は、8月22日(水)~8月26日(日)の日程で開催される。100kmの道のりを一生懸命歩きぬくことを通して、若者たちが大きく成長する姿を目で見て、肌で感じてもらいたい。

団体について


はが路100km徒歩の旅実行委員会

〒321-4306 栃木県真岡市台町2343(真岡珠算簿記学校内)

TEL 0285-82-8888

FAX 0285-83-6388

ウェブサイト

メール

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○子どもの「生きる力」の醸成

○地域リーダーの育成

○社会人の生涯学習の場

○地域コミュニティの活性化

○地域の魅力再発見

とちコミ運営委員のコメント


 このはが路100km徒歩の旅を通して、仲間と呼べる関係性に気が付いていた学生の姿は、とても印象的でした。ありのままの自分で他人と向き合うことで、本当の意味での人間関係が生まれる。そんなことに気が付くようなきっかけを提供するはが路100km徒歩の旅。このような機会が今の現代に必要とされているのではないか、そう感じさせられました。ぜひ輝いている若者たちの姿を見に行ってみてください。(加藤)

 近年は「小学生の時に参加して100km歩いた」という学生スタッフもいるとか。芳賀地域の未来を支える大事な事業として、歴史が脈々と続いていることを実感させられるエピソードです。(土崎)