信頼と共感を生む活動の理由。/トチギ環境未来基地

 トチギ環境未来基地は、若者のチームによる長期間の環境保全活動、地域活動に取り組むConservation Corpsプログラムを中心に、地域の若者と自然環境の課題に関する取組みを進めている団体である。

 

 Conservation Corpsプログラムは、発祥の地・アメリカでは年間25,000人以上の若者を巻き込みながら展開している。

 

 理事長を務める塚本竜也氏は、学生時代にこのプログラムに参加し、日本でも同様の実践をしたいとの思いを強く抱くようになった。帰国後、数多くのNPOでの活動に携わり、ニートや引きこもりを経験した若者の自立支援を栃木県内で続けていく中で、この地での実践を足掛かりにConservation Corpsプログラムを日本国内に普及させる可能性を実感。2009年6月に団体を設立し、2010年10月にはNPO法人格を取得した。

若者たちを育む「基地」

 現代社会にはあらゆる問題が山積しているのは言うまでもない。自然環境に目を向けてみると、森林整備の担い手が減少し、生態系の変化や環境保全の問題などが生じている。その一方で、人間関係に悩む若者が多く、彼らの無縁化といった若年者を取り巻く問題もある。

 

 しかし、異なる問題同士を組み合わせることで解決できることもあるのではないだろうか。今、日本の森林は、確実に人の力を必要としている。そして、若者も成長できるチャンスを必要としている。

 

 多くの人材を必要とする森林・自然環境の保全。

 

 活躍・成長する場を必要とする若者。

 

 トチギ環境未来基地では、この二つの社会課題を関連づけて解決していこうと活動を行っている。

 

 その活動の中心となっているがTochigi Conservation Corpsだ。これは、若者たちが約3か月間の共同生活を行いながら、環境保全活動に取組んでいる。その中で、若者は、社会課題を身近に感じ、その解決の過程で若者一人ひとりがそれぞれ役割を担う。

 

 これからの社会の担い手として、社会課題を多面的に捉え、よりよく解決できる能力を持った若者が必要不可欠だ。だからこそ、それらの課題について深く考えるきっかけをつくり、時には失敗をしながらも汗を流し、活動を通して若者一人ひとりが自信を持つことができる場が重要である。トチギ環境未来基地には、このような若者を育む「居場所と出番」が存在している。

「現場」が生み出す共感の輪

栃木で育てたクロマツの苗木で、福島の海岸林の再生を目指す
栃木で育てたクロマツの苗木で、福島の海岸林の再生を目指す

 トチギ環境未来基地には、数多くの「現場」がある。幼稚園、隣町の竹林、地域のお散歩コース。栃木県内を飛び出して、福島県いわき市にも海岸林や仮設住宅などの「現場」を持っている。

 

 それと同時に、現場での活動にはいつも多様な主体の参加がある。自治会、自立支援団体のプログラムに参加している若者たち、県内外から参加する災害ボランティア。多くの現場、多様な主体の参加――活動の広がり、深まりの秘訣はいったいどこにあるのだろうか。

 今回、大木本舞事務局長に話を伺ったところ、その理由がはっきりとわかった。それは「丁寧な活動を継続して行っている」ということである。現場における多くのパートナーとの対話を繰り返し、時には様々な配慮をし、中長期的なビジョンを描きながら活動を進めることで、信頼され、共感を得ることができる。

 信頼と共感が現場での新たな展開や、継続したボランティアの参加、さらには支援者の拡大につながっている。

 

 いわき市での災害ボランティア活動では、がれき撤去の作業の中から新たな社会課題を見つけ出し、地元の団体と協力して海岸林の再生を目指す「苗木 for いわき」プロジェクトがスタートした。

 

 植林するためのクロマツの苗木を育てている賛同者の多くは、これまでの活動で共に汗を流した仲間たちである。また、寄付を通じてこのプロジェクトを応援している仲間たちも数多くいる。さらに、こうした多くの仲間たちには定期的に活動報告のためのニュースレターを送り、時には飲食を共にする場を設け交流を深めている。

若者たちが躍動する現場を数多く持つ
若者たちが躍動する現場を数多く持つ

 トチギ環境未来基地は二つの仕組みを兼ね備えている。

 

 若者たちが自分自身を高められること。

 

 地域の困りごとを解決できること。

 

 ひたむきな彼らの姿を目の当たりにした人々は、その活動を応援せずにはいられない。

 

 当たり前のことではあるが、多くの人を巻き込み、共感の輪を広げるために必要不可欠なのは「汗を流す」ことである。

団体について


特定非営利活動法人 トチギ環境未来基地

〒321-4104 栃木県芳賀郡益子町大沢2584-1(明在庵内)

電話・FAX 0285-81-5373

http://conservation-corps.jp/tochigi/

E-mail tochigi@conservation-corps.jp

 

とちコミ認証取得済み とちコミ認証とは?

 

○若者の社会貢献活動拠点事業

○若者のチームによる長期間の森林、自然、地域保全活動(Tochigi Conservation Corps)

○短期合宿ボランティア活動の企画・運営事業

○地域・環境リーダーの育成事業

○若者の自立支援団体との連携による人と森を育む事業

○国際ボランティアの受入を通じた国際協力事業

○若者の社会貢献に関する調査研究事業

○ソーシャルプロモーション事業

 


「トチギ環境未来基地」の活動を寄付で支援しませんか。

こちらからご覧ください。

とちコミ運営委員のコメント


 「丁寧な活動を継続して行う」ということは、とても単純なことかもしれませんが、これがきちんとできている団体はまだまだ数少ないのではないかと思います。彼らの活動から、改めて、自分たちの活動を見直す必要があることに気が付かされました。また、「誰かが動いている姿が、また誰かを動かす」ことを実感しました。トチギ環境未来基地の素晴らしい活動の進め方、見習いたいと思います。(加藤)

 個人的には「紹介せずにはいられない」NPOの一つです。ミッションに基づく中期計画を策定し、それを拠り所に日々活動を進めている姿は、NPOのあるべき姿と言っても過言ではありません。いつも勉強させてもらっています。(土崎)