「アーシャ」とは希望を意味するインドの言葉。
国際NGO「アーシャ=アジアの農民と歩む会」は、若き日本人農学者とインドの人々との交流からはじまりました。
40年余り前、同会の創設者・牧野一穂氏(現理事長)はインドのアラハバード農業大学(現サム・ヒッキンボトム農工科学大学)に招かれました。大学で教鞭をとるかたわら地域の人々と交流をはじめた牧野さんが目にしたのは、貧困にあえぐ農村の現実でした。
貧しさの原因
貧困の原因はインド特有の身分制度(カースト制度)と一部の富裕層が肥沃な土地を独占する土地制度などに起因していました。中でも問題だったのは教育を軽視する風潮で、特に低いカーストの人々は女性や子どもを安価な労働力としか考えず、教育に消極的でした。
「教育が絶対に必要だ」貧困の根源を絶つべく、牧野さんはアラハバード農業大学を拠点に40年以上にわたって農村の教育普及活動を続けました。
女性と子どもに希望と教育を ~農村で働く人づくり~
アーシャ=アジアの農民と歩む会は、牧野さんの活動に共鳴した有志が集い、更なる農村支援の継続と発展のために2004年に設立されました。現在では貧しい家庭の子ども、女子、青年のための教育支援、農村リーダーの育成、女性の地位向上、母子保健改善など多岐にわたる事業を行っています。特に母子の保健衛生事業においては、新生児死亡率低下を目標に、現地の保健行政と提携しながら日本人の専門家による改善指導を行っています。
当初は懐疑的だった現地の人々も、農村を豊かにするには教育が必要であることを理解するようになりました。
農村指導者の育成事業
同会は、牧野さんがアラハバード農業大学に創設した継続教育学部に、インドや周辺諸国の農村地域から研修生を受け入れ、農村青年のための持続可能な農業研修を実施する事業を支援しています。
「研修は『Learning by Doing』をモットーとし、座学はもとより、より農場での実践的な手法を取り入れ、自家培養できる光合成細菌、土着菌など用い、家畜を育て、緑肥、糞尿からボカシ肥、堆肥、液肥を作り、安全な野菜を育てる有畜複合農業の理論と実践を中心に行っています。小規模・貧農農民のための小規模自然養鶏、発酵床養豚、農村地域の人々が作物から収入を得るための食品加工技術、作物の生産や販売、技術協力などのための有機農業組合の運営方法、また日本へのフェアトレード商品の販売を含む新たな市場の開拓方法など多岐にわたり、研修後には再び農村地域に戻り人々の生活向上のためにそれぞれの農村地域で活動を続けています。」(同会ホームページより)
より持続可能に
インドでは化学肥料を使うと土壌が荒れるので、できるだけ有機肥料を使う農業の指導を行っています。また、貧しい農家がより良い収入を得られるように、ハムやソーセージ、味噌、醤油など農産品の加工から販売に至るまでの技術向上を日本人の専門家らが支援しています。
アーシャ=アジアの農民と歩む会は、今後も社会的に差別されている女性、子ども、貧しい農村に焦点を当てた支援を続けながら、日本とインドの草の根の交流活動を行っていきます。
なぜ栃木県に?
同会発起人の中には、途上国の農業指導者育成機関「アジア学院」(那須塩原市)の関係者もおり栃木県とは縁がありました。日本では途上国支援のNGOは大都市、特に首都圏に集中しているため、地方の市民が参加する国際協力が活性化していません。同会は敢えて栃木県内に本部を設け、NPO協働まつりやフェアトレード・フェスタ等にも積極的に参加しながら地方市民の国際協力への参加を促す活動もすすめています。
団体について
特定非営利活動法人アーシャ=アジアの農民と歩む会
事務局所在地:
〒324-0028 栃木県大田原市富士見1-3828-70
TEL・Fax: 0287-24-1126
交流センター:
〒329-2705 栃木県那須塩原市南郷屋4丁目28-4パストラルB202
TEL・Fax: 0287-47-7840
Email: info.jp@ashaasia.org
とちコミ運営委員のコメント
牧野さんが蒔いた「アーシャ(希望)の種」がすくすくと育ち、支援と交流の輪が広がっていることに感動しました。研修を受けた若きリーダーたちによって、心身共に豊かな農村が実現できるよう願ってやみません。ぜひ、現地に行ってみたい!未来に希望を見出せず閉塞状態の只中にいる私たち日本人にとっても、学ぶべきことが多いのではないでしょうか。